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株式会社オリーブ

株式会社オリーブ(大分県大分市)の代表を務める安田ゆかりさんは、アニメ制作業界で様々な実績を残した有限会社GREENを退職し結婚を機に大分県へ移住。

退職後も引き続き、外注という形で制作を続けていたが、GREENの社長からの声がけで大分スタジオを2008年に立ち上げた。その後、2017年に社長が引退し同社は解散。安田さんはアニメ制作事業を継続し株式会社オリーブを設立。刀剣乱舞などアニメの美術を担当し、数々の背景制作を手掛けている。

首都圏以外での外注は珍しかった

大分県に移住した時はまだデジタル化が進んでおらず、紙に描いた作品を郵送をしていた。時間的な制約があり、ギリギリまで作業することはできなかった。関東近辺の制作会社もリテイクの度に車を走らせて背景制作会社を行き来していた時。「当時は監督や制作会社が一堂に会し会議をするのが主流でしたが、一人だけ地方からのオンライン出席で罪悪感を感じていました」と安田さんは振り返る。

デジタル化、コロナ禍後

業界全体が徐々にデジタル化が進み、今ではアニメ背景制作のほとんどがデジタル納品に変わった。アニメが配信される前に納品が終わっていることも増えてきた。打ち合わせも、リテイク(手直し)のやり取りも全てオンラインで終わるため、地方に住んでいても不便に思うことが少なくなった。コロナ禍でオンラインミーティングの許容が広がり、今では東京に住んでいる人もリモート出席が普通になった。また、地方は家賃などの生活費が安い。

一方で人間関係の構築の難しさを感じている。対面での会議は雑談も増える。その場で次の仕事へと発展する機会が少なくなった。

オンライン会議用の個室。ここで打ち合わせする

やっていることはデジタルコンテンツとは思っていない

当時の最先端PCを買ってデジタル化の環境を整えたが、全然慣れず、結局は紙で描いていた。作品をスキャンして、データで”汚れを取ること”から始まって、徐々に慣れてきたら「これも楽じゃん、これもできるじゃん」という形でデジタル制作に便利さを感じた。

「パソコンを使っていても結局は手作業。ただ筆と絵の具がパソコンになっただけ。今やっていることはデジタルコンテンツではないと思う」と安田さんは取材の趣旨に沿っていないのではないかと申し訳なさそうに話す。

手書きと3DCG

背景制作は手書きの描写とリアルなCG描写の二極化になっている。作品の監督によって好みや流行がある。リアルな描写の作品が続けば、反動で手書き風の需要が増えることもある。ただ、CGやゲームの背景はとても描けない。そこではないところで勝負していきたい。

この業界を目指す方へ

「”引き出し”を増やしておくことですね。今は異世界ものの作品が増えているからいろいろなものを描かなきゃいけなくて。でもアニメは時代考証がほとんど無いので、それっぽいものが自分で選べて描ける。花瓶なら和風から洋風からロココ調…という風に、様々な時代・場所の知識を知ることが重要。その中から適切なものを選ぶために、自分の中にいろんなパターンの引き出しがあると良い」


いろいろなことに興味を持つことと、“実物を見て描く”という意識を持つことが大事だと安田さんは語る。 今はネットで調べればすぐに答えが見つかる時代。そういう時代だからこそ、ありとあらゆるものに興味を向ける熱量と実物を見つめるアナログな努力が、新しい答えを生み出す原動力になるのかもしれない。